2015年12月03日

産神問答

むか〜しむかし ある村に
二八という男がおったそうな。
ある日、急な用事でとなり村まで行くことになった。
困ったことに女房は、いつ産気づくかわからない。
「急いで戻るから。」 と言い残し家を出た。
気持ちは急くが、石臼峠まで来たときに
どうしても眠くてたまらなくなった。
しかたなく、神社に泊めてもらうことにした。

夜更けに、ジャンジャンジャンジャンと派手な音を立てて
鈴馬に乗った神様がやってきて、 
「隣の村でお産があるから、一緒に行ってくれんか。」 と言った。
峠の神社の神様は、
「今夜は客人が泊まっておるから留守にできん。
ひとりで行って安産させてやってくれ。」 と答えた。
鈴馬の神様は、ひとりで行ってまた戻ってきて言うことには、
「安産させてきた。だが、かわいそうにその子は
二十歳になった時、蛇の餌食になる運命じゃ。」
それを聞いた二八は、
「これは、うちのことかな。」 と不安になった。

次の日急いで用事を済ませ家へ帰ると、
元気な男の子が生まれておった。 玄吉と名付けた。
二八はなんとか玄吉を助けたい一心で、
熱心に神信心して、ひそかに金を貯めた。
あの晩、神社で聞いたことは誰にも話さなかった。

玄吉が二十歳になった時、貯めた金を持たせて、
日本中の神様にお参りしてくるように言った。
玄吉は、言われたとおり日本中の神様にお参りし、
その帰り道のことじゃった。

腹が減ったのでそば屋をさがして歩いていると、
大きな大きな大坊主に出会った。
「おまえは、これからどこへ行く。」 大坊主が聞くので、
「そば屋へ行ってそばを食べようと思っとります。
あんたも一緒に行きましょう。」

この大坊主、食べること食べること。
玄吉がざる一枚食べる間に、大坊主は十枚という速さで食べ続けた。
慌てたのはそば屋だ。
こねるやら打つやら茹でるやら大騒ぎ。
大坊主は、とうとう一斗粉ほど全部食べたそうな。
(一斗粉? とにかく大量。)
勘定は俺が払うと大坊主は言ったが、玄吉がご馳走した。

店を出て別れる時、大坊主が言った。
「実は今年、おれはおまえを呑みこむことになっておった。
ところが、取って呑もうとすると
神様がおまえを守ってじゃまをする。
どうしてもおまえをつかまえることができん。
それに 今おまえはそばをご馳走してくれた。
だから おまえを取って呑むのはやめにした。
うちへ帰ったら親孝行して暮らせよ。」
そしてどこかへ行ってしまった。

玄吉から大坊主の話を聞いた二八は、
峠の神社で夜更けに聞いたことを
初めて息子に話して聞かせましたとさ。

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posted by 蕎麦屋の女将 at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 蕎麦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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