2017年04月20日

夢 第七夜 身代わり

案内された先は 機内のキッチン ギャレーだった

狭いギャレーの中で 彼女はくるりと向きを変えると


「突然のお願いで失礼ですが 写真をとらせていただいてもいいですか?」


想定外の展開に 俺は少々戸惑った

そんなこちらの気持ちにはお構いなしに 彼女は早口で続けた


「実は先日 あるお客様に カメラが趣味です とお話したら

ならばこのカメラで 若いイケメンを撮ってごらん 良く写るよ

なぁんて冗談をおっしゃって カメラをくださったんです

懐中時計の鎖をのぞかせた 初老の紳士でした

ロマンスグレーって ああいう方のことを言うんでしょうか

あっ それでねっ 

こんな高価なもの いただけませんっ て 

一度はお断りしたんですよぉ でも 」


一体 いつ息を吸うのか 心配になるくらいの勢いで 

彼女のマシンガントークは続く


「実は私 職人さん にも興味があって

そこで 決めたんです 自分の搭乗した機に乗っていらっしゃる 

職人の方々を いただいたカメラで 写真に収めようって

お蕎麦屋さんとか パン屋さんとか 大工さんとか … 」


そこまで一気にしゃべると

ギャレーの片隅にあったバッグの中をガサゴソやり始めた

「イケメンじゃないのが残念だわ」 たぶん そう思いながら

再び俺のほうに向きなおった彼女の手には 

二眼レフカメラがのっていた


あぁっ あの時の さっき夢の中で掘り出した あのカメラだ!


出してくれ ここから出してくれ そっちの世界に戻りたい

俺の身代わりをみつけてくれ


ファインダーの中のハンチング男の声が蘇った


み・が・わ・り


「はい 撮りますよぉ」

彼女の声で 我に返った


やっ やめろ ダメだっ!


彼女の 細く白い指が 静かにシャッターを切った



石臼碾き手打そば 「 百日紅 」



posted by 蕎麦屋の女将 at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月19日

夢 第六夜 高度1万メートル

「お客様の中に お蕎麦屋さんは いらっしゃいませんか?」

機内にアナウンスが流れ 俺は夢から醒めた

隣の席に座った若い男が かったるそうに腰を浮かし 中腰のまま

通りかかったキャビンアテンダントに尋ねた

「いまのアナウンス なんて言ったの?」

「はい お客様の中に お蕎麦屋さんは いらっしゃいませんか? と」

「お医者様 じゃないの?」

「いいえ お蕎麦屋さん です」

ホッとしたような がっかりしたような 中途半端な表情を浮かべ

男は再び腰を下ろした

生意気な顔をした 医者のタマゴめ

実は 密かにこんな場面にあこがれていたに違いない


俺は迷っていた 名乗り出ようか 知らぬ顔で通そうか … 

高度1万メートルで 蕎麦屋に何の用があるというのだろう

まさか 機内で蕎麦を打て とは言うまい

下手に名乗り出て 妙なトラブルに巻き込まれるのはごめんだ

好奇心と不安を天秤にかけ 好奇心が勝った

CAに案内されるままについていった先は …


石臼碾き手打そば 「 百日紅 」



posted by 蕎麦屋の女将 at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月17日

夢 第五夜 ファインダーの向こう側

短く小さな太鼓橋

その太鼓橋の下で 俺は土を掘り起こしていた

しばらく掘っていくと何やら黒い箱が出てきた

入れ子になったその箱を ひとつひとつ開けていく

最後の小さな箱から出てきたのは 古い二眼レフカメラだった

重い 1キロはあるだろう

昔のカメラだから フィルムを入れて撮影するアナログカメラだ

あと12枚分フィルムが残っている

と なぜかわかる

あちこちいじっていると 上蓋が開いた

ファインダーだ

ファインダーを上から覗き込み

試しに 目の前の景色を撮影してみた

そしてプレビュー

アナログカメラなのに なぜかプレビューできる

たしかに目の前の景色なのだけれど

画面の中はどう見ても 昭和30年代

モノクロの世界だ

場所を移動して もう一度 シャッターを切った

プレビュー画面には やはり昭和の人々が写っていた

ボンネットバスが走っている

少女がフラフープで遊んでいる

女の人たちは 割烹着を着て 買い物かごをぶら下げている

何度か場所を変えてみたが 同じだった

そしてふと気が付いた

どの写真にも ひとりだけ同じ人物が写っている

ひょろっと背の高い ハンチング帽の若い男だ

1枚目より2枚目 2枚目より3枚目

少しずつ こちらに近づいてくる

子供のころ遊んだ 「達磨さんが転んだ」を思い出す 

いよいよ 顔の表情までわかるくらい近づいてきた

男は 怒ったような目で俺を睨んでいる

カメラのファインダーから目を離せば

目の前には 現代の風景が広がっている

ハンチング帽の男など何処にもいない

そこでやめておけばよかった

10枚目 もう手を伸ばせば届きそうな距離まで迫ってきた

もうやめよう しかし

右手の指が勝手にシャッターを切っていた

11枚目 男の右手が 俺のむなぐらをつかんだ

目をつぶって 12枚目

最後の一枚のシャッターを切った

プレビュー画面には 

必死の形相で俺に迫る男がアップで写っていた


男の声が聞こえてきた

「出してくれ ここから出してくれ そっちの世界に戻りたい」


primoflex.JPG   でも どうやって?

   「俺の身代わりをみつけてくれ」

   身代わり?

   そこで目が覚めた


   石臼碾き手打そば 「 百日紅 」



posted by 蕎麦屋の女将 at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする